税務調査でお問い合わせの多い事例(帳簿なし・領収書無し・申告なし)

 

 税務調査全般

こんにちは。税理士の吉田です。

秋の税務調査シーズンに入り、お問い合わせも増えてきました。

ここ数年で弊所にお問い合わせ頂くことが多い事例を記載します。

領収書がほとんどない(又は一部ない)

調査期間の領収書がない(紛失)というかたが一定数います。

またそもそも取っていない(領収書をもらっていない)という方もいます。

領収書がなければ当然出金の記録がないので、正確な経費額の把握ができません。

取るべき方法としては、取引の相手方に照会をかけて取引履歴を開示してもらいます。(又は領収書等の再発行を依頼します。)

また、クレジットカードやペイ払いなどのキャッシュレス決済の場合は、取引履歴の開示請求やアプリなどから履歴を確認するなども可能ですが、正式な領収書ではないため本来は認められません。(調査の実務現場では認められることが多いですが・・)

問題なのは現金払いの領収書が無い場合です。駐車料金、ホームセンター、家電量販店等は取引が特定できないため、再発行はしてくれません。

開示請求や照会などである程度把握出来たら、あとは推計という方法で行うほかありません。

推計には専門的な知識が必要であったり、同業他社の数値を使うこともあります。ヒアリングによりかかっている経費を把握し、交渉材料にすることもあります。

進行期の経費額から推計する可能性もあるので、もし領収書を取っていない方がいたら、今この時点から保管するようにしてください。

帳簿を作っていない

法人の場合は複式簿記により作成した帳簿(総勘定元帳)を作る義務があります。(当然と言えば当然ですが・・)

個人事業者の場合は、青色申告なら複式簿記により作成した帳簿、白色申告なら原則単式簿記で作成した帳簿が必要です。

帳簿はエクセルや手書きでも認められますが、法人や個人の青色申告の場合は会計ソフトがないと作成は難しいでしょう。

通常の税務調査では、帳簿と請求書・領収書等の突合が行われ舞うが、帳簿を作っていない場合は突合しようがありません。

ですので、帳簿を一から作るか、再度集計する必要があるということです。

青色申告されている場合は、青色申告の取り消しや個人事業者なら青色申告特別控除の取り消し(又は減額)になる可能性が高いです。

申告書に記載した売上金額や経費金額が適当

確定申告をするのは専門的な知識も必要でそれなりに時間もかける必要があり、時間が無く「なんとなくこんなもんか」といった形で申告書を作る方も一定数います。

この場合も領収書や請求書から再度集計を行い、正しい所得金額を算定するしかありません。

また、集計した結果あまりにも当初申告額と差異がある場合は、重加算税や調査期間の延長も十分考えられます。

このあたりは論点が複雑なので割愛しますが・・。

そもそも申告していない(無申告)

無申告で調査に入られるケースもあります。

ただし、無申告の場合は「お尋ね」という形で、文書や電話、訪問で申告が必要かどうか確認されることもあります。

その後速やかに自主的に申告される場合は、調査に移行されずに済むケースもあります。(行政指導と言われるものです。)

お尋ねレベルなのか税務調査なのかは確認した方が良いでしょう。

調査年分の延伸、重加算税について

以上で記載した状況では、かなり納税者の分が悪いです。

特に、以下のケースに注意が必要です。

重加算税の対象

重加算税は、申告内容に仮想隠蔽があった場合、原則本税の35%の重加算税がかかります。

先の事例で言うと、

・領収書を故意に破棄していた

・売上金額を故意に相当低くしていた

・経費金額を故意に相当高くしていた

ことがこれに当たります。

その他にも故意に売り上げを抜いていた(別口座に入れていた)、消費税の納税をしたくなく売上を1,000万円以下に抑えていた、架空の経費を計上していたなどもこれに当たります。

ただ、申告していないだけというケースでは重加算税ではなく無申告加算税がかかります。

単に領収書無し、帳簿無し、といっただけでは重加算税の対象にならないことも多くあります。

調査年分の延伸

税務調査は多くの場合3年間で指定されます。

ただし、その3年間で間違い(非違)が見受けられる場合は、5年に延伸できることになっています。

当初申告額と相当違う場合は、5年の延伸を覚悟した方が良いでしょう。

また、偽りその他の不正行為がある場合は7年に延伸されます。

簡単にいうと「重加算税=7年に延伸」と考えても良いでしょう。(厳密には少し違いますが・・)

無申告の場合は相当悪質でない限り5年で済むケースが多いですし、弊所で受けた案件は全て5年の期限後申告をして終了しています。

まとめ

帳簿無し、領収書無し、申告無し、といったケースはかなりまずい状況であると言えます。

正確な所得金額の把握が難しいこともあり、税務署と交渉して落としどころを決めていくことも多くあります。

専門的な知識も必要で、税理士に立ち会いを依頼した方が良いと言えるケースが多いです。

また、税理士によってはこのような案件は立ち会わない(立ち会いたくない)、経験がないのでどう税務署と交渉したら良いかわからない、といった税理士も多くいるのが現状です。

弊所では、新規の税務調査では帳簿無し、領収書無し、申告無しのいずれかにあたるケースが多く、かなり場数を踏んでいます。

また、税理士が立ち会うことによって精神的も頼れる、税務署との交渉や修正申告まで任せられて良かったと感じる方もいます。

どんな不利な状況でもご相談はお受けできますので、税理士の立会を検討されていればお問い合わせ頂ければと思います。

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