推計課税をするケースと推計方法とは?
こんにちは。税理士の吉田です。
本日は推計課税のお話です。
推計課税とは?
推計課税というのは、例えば、
「現金での売上の原資記録が無いなどで、正確な売上金額がわからない」
「経費の領収書や請求書などがなく、経費の正確な金額がわからない」
といった場合に、金額を推計して各勘定科目(又は所得金額)を決めることです。
普通、私たち税理士が関与している案件であれば、きちんと整理された証拠資料(領収書や売上レシート等)をもって帳簿に記載する訳なのですが、推計になるケースは税理士がついてない案件がほとんどではないでしょうか。
推計課税をする前に、できるだけ正確な金額を拾う
推計課税をするケースは、どうしても売上や所得金額が正確に把握できないケースのみ行われるもので、まずは拾えるところは拾い、足りない部分を推計するといった手法がとられます。
例えば、業者相手の売上や仕入れなどでは、取引業者から売上や仕入れ金額を証明してもらうなどの手法がとられます。
経費面も同じです。細かいところでは、携帯電話料金を問い合わせしたり、クレジットカード会社に過去の利用履歴を出してもらったり、できるだけ正確な金額を把握します。
それでもわからない場合、推計という形になるのです。
具体的な推計方法は?
推計方法と言っても多種多様あります。
ただ、気を付けるべきことは、推計は税務署が行うことなのです。税務署の裁量によるところが多いのが厄介なところです。
とはいっても、税務署も適当に推計する訳でもなく、同業他社比率も用いますが、事案によっては納税者の個別事情を汲んでくれるケースもあります。
一つ言えることは「具体的で合理的な推計方法」によるということです。
実務的によく用いられることとして、例えば過去の申告で領収書が紛失していた事例で、今年の領収書の保存状況が良い場合は、今年の売上に対する経費率(固定的経費についてはそのまま)で算定した金額を要求されることも多いです。
これは、一般的に考えると同じ商売を長年やってきているのであれば、売上に対する経費率も似たり寄ったり、という考え方からくるものです。
どちらにしても「推計」でしか所得計算ができない状況なので、推計した結果に不服(大幅な差異は別として)があったとしても、なかなか抗弁できないことも多いのが実情です。
税務署の推計方法がかなり無茶苦茶な方法なら話は別ですが、税務署も推計をやり慣れている側面もあり、合理的な推計方法を提案されることが多いのです。
原資記録をきちんと保存していないのはやはり納税者の責任なのでどうしょうもない部分もありますが、推計結果に不服がある場合はもっと合理的な推計方法を持って税務署と交渉していく他ありません。
消費税の納税が焦点
消費税については、例えば仕入れや経費で支払った消費税が控除される「仕入税額控除」を取れるかどうかが焦点です。
推計であるということは、領収書や請求書の保存がされていないということが想定されますので、こういった書類がない状況では仕入税額控除を取ることは法律上杓子定規に判断するとできないことになります。
しかし、これも実務上の話ですが、書類の保存がなくても仕入税額控除を認めてくれるケースも存在します。
これは仕入税額控除以外の調査指摘事項にもよるところああったり、悪質性や今後の申告を適正に行うかどうかというところにも関係してくるところです。
法律的に仕入税額控除が受けられない状況なので、ここはもう税務署に懇願するしかありません。
そういった意味では、そもそも領収書や請求書などが紛失しているという状況では、こちらの分がかなり悪いです。
調査に全面的に協力する姿勢を見せ、なんとか穏便にお願いするしかありません。
私も全て資料がある状況では、法律論で戦えるのですが、何も無い(又は資料が乏しい)状況では、どうすることもできません。
とにかく、「資料はぐちゃぐちゃでもいいから絶対に捨てないで」と心の中で思っています。