税務調査をきっかけに顧問契約へ――無申告法人の再出発を支えた実例
こんにちは、札幌の税理士吉田です。
法人を設立してから一度も申告をしていないまま、数年が経過してしまうケースは少なくありません。
今回は無申告法人の社長が税務調査をきっかけに当事務所と出会い、顧問契約に至った実例です。
初めての税務調査に戸惑いながらも、資料整理から申告、経理体制の立て直しまで一歩ずつ前進された過程を通して、「無申告からの再出発」がどのように可能になるのかをお伝えします。
はじめに
今回ご相談いただいたのは、法人設立から数年にわたり一度も申告をしていない企業の社長でした。税務署への届出も行っておらず、経理処理はもちろん、帳簿の作成や会計ソフトの利用もない状態でした。
社長ご自身も「いつかは申告しなければ」と考えていたものの、実際に税務署へ相談に行った際に内容が難しく、そのまま手を付けられずに時間が過ぎてしまったとのことです。
そんな中、税務署から「調査を行いたい」と電話連絡が入りました。
突然の税務調査の連絡に、社長は大きな不安を感じ、どう対応してよいか全く分からない状況でした。そこで、インターネットで検索し、当事務所へご相談いただくこととなりました。
税務調査の通知と社長の不安
税務署からの電話を受けた社長は、非常に焦っていらっしゃいました。
「調査といわれても何を準備したらよいのか」「資料がないがどうすればいいのか」「どこまで見られるのか」と、次々と不安が浮かび、夜も眠れない状態が続いたそうです。
税務調査は、初めて経験する方にとって大きな心理的負担になります。特に無申告の場合、「怒られるのではないか」「重い罰を受けるのではないか」といった恐怖心を抱くのも当然のことです。
社長は「自分だけではどうにもならない」と感じ、専門家の力を借りようと弊所に連絡をされました。
初回相談と現状把握
初回面談では、現状の確認から始めました。帳簿は存在せず、領収書や請求書も一部紛失している状態でした。
そこで、まず通帳の取引履歴を取得し、資金の流れを確認するところからスタートしました。
足りていない請求書やクレジットカードの利用明細は再発行を依頼し、できる限り資料を集めていきます。社長にも協力をお願いし、「今ある情報をできる限り正確に整理する」ことを目標に進めました。
資料の整理と状況の把握がある程度整ったところで、税務調査に臨むことになりました。
税務調査当日の対応
税務調査当日は、まず前半に社長の経歴や事業内容についての確認が行われました。取引先・仕入先・借入金・社有資産の有無など、基本的な事項を丁寧にヒアリングされます。
その後、給与明細や源泉徴収簿、源泉所得税の支払い状況、さらに消費税の納税義務の有無についても確認がありました。
社長のご希望もあり、当方で帳簿を作成し、その内容を税務署の調査官に確認してもらうという形で話を進めました。
調査では一部書類の確認や通帳コピーの提出を行い、1回目の実地調査は2時間程度で終了しました。
修正申告のサポート
調査終了後、当事務所にて帳簿の作成を本格的に行いました。社長には引き続き、足りない資料の再発行をお願いし、できる限り整った状態に近づけていきます。
ある程度数字が形になった段階で、不明点について打ち合わせを行いました。現金支払いや資料不足の部分もあり、当初は利益がかなり高い数字になっていました。
そこで、会社に残っている預貯金や社長個人の資金状況、役員報酬の金額、生活費とのバランスなどを検討しました。
その結果、実際の実態に即して利益はもう少し低いと判断。信頼できる年度の数値を基準に、各勘定科目ごとに推計基準を作成しました。
この推計内容について税務署調査官と交渉を行い、ひと悶着もありましたが、最終的に妥当な金額で折り合いをつけ申告書を提出しました。
ある資料だけでまとめたらかなり高額な税額になっていましたが、結果想定していたよりも負担の少ない形で申告を終えることができ、最悪の事態は免れることができました。
再発防止のための提案と経理体制の整備
申告を終えた後は、再発防止のための体制づくりに取り組みました。
まず、経理資料を漏れなく整理すること、公私混同をなくすこと、経理処理の流れを明確にすることが必要です
具体的には、
- 請求書や領収書を必ず保管する
- クレジットカード決済でも領収書を受け取る
- ネットショップの購入は領収書をダウンロードして保存する
という基本的な管理を徹底し、さらに、
- 飲食費には同行者の会社名・氏名を記載する
- 贈答品には贈答先を記録する
など、調査があっても困らないように整備を進めていきたいとお話ししました。
また、業績を正確に把握するため、毎月試算表を確認し、過去の数字の振り返りと今後の改善を考えられる仕組みを整える必要があります。
このような継続的なサポート体制を維持するため、顧問契約を結ぶこととなりました。
現在では、金融機関からの借入もスムーズに進み、納税も滞りなく行えるようになっています。
顧問契約に至った理由とその後の関係
社長はもともと、「自分だけでは申告や経理はできないので、専門家にお願いしたい」と考えていたそうです。
税務調査を通じて当事務所の対応を見て、「親身に寄り添ってくれた」「これからも安心して任せられる」と感じていただきました。もちろん税務調査の結果も良かったから、というのもあるかも知れません。
現在は、毎月の会計データを確認しながら、必要に応じて税務・資金・経営に関するご相談を受けています。
まとめ
無申告であっても、正しい手順を踏めば再出発は十分に可能です。ただし、税務や会計は専門性が高く、個人の努力だけでは限界があります。
専門家が伴走し、正しい手続きと継続的なサポートを行うことで、企業は安心して事業に専念できるようになります。
弊所では、新規の税務調査対応のサポートや、しっかりとした経理体制構築の支援を行っています。税務調査への対応をご希望の方は、ぜひお気軽にご相談ください。顧問契約のご希望やご相談も随時承っております。
※編集後記の内容については、別途ご指示をお願いいたします。



 
										